Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜〔番外編〕

鹿肉

エゾシカ草食から一転して肉食の道を歩き出してしまった。
「道端の肉」では野蛮すぎるか。

少なくともひと冬に1頭分は食しているのではないだろうか。
狩猟時期になるとハンティング好きの友人からよく鹿肉をわけてもらう。
友人は私の料理好きを知っているので、肉はブロック単位で持ち込まれ、台所で繰り広げられる血に染まった解体ショーに妻や子供はかなりいやな顔をしていたが、最近はシカ肉の旨さを知ってしまったために単なる準備だと理解するようになり、かなり好意的である。
子供たちも大ファンである。このことがどのくらい贅沢であるかいつ気がつくだろう。そういう環境に感謝したい。

一般的にハンター肉は生体加工と比較すると血抜きが劣るが、これを嫌っていてはジビエの旨さは追求できない。
少し時間がかかるのを我慢して調理するのが大切なところだ。
血抜きの不十分な肉を食べると匂いがあり、これを食べた経験で、鹿肉が不得意になる方も多い。たいへん残念なことである。

鹿肉は脂肪も少なく少し硬いが、味は最高である。
スープもジビエ独特の深いコクがあり我が家では定番の味である。
いろいろと食べ方の研究も進み、メニューも増えた。

ヒレやロースはステーキにする。ワインにつけてローストするのも人気だ。
ただし、最低1週間は肉を熟成させなくては本来のうまみは出現しない。こういうことを自然に学んでしまうあたりがすばらしいことだと思う。
モモ肉は焼肉、たまには野外でブロックごとローストし大勢で切り分けて食べる。盛り上がること請け合いである。
スペアリブはスープに、油の乗ったばら肉がするっと骨からはずれるくらい煮込むと肉も柔らかく、また当地産の芋の味と良く合う。
硬く筋のあるスネ肉や首肉はハーブとビールの塩煮で、これは冷やして薄く切って食べるか、ミズ菜などの生野菜といっしょにドレッシングをかけるとフランス料理の前菜のようだ。
加工中に出るくず肉は生姜を刻んで圧力鍋で煮るとちょっと一杯のお通し風になる。ああ、なんとすばらしい。想像しているだけでよだれが出てくる。

魚の世界では天然と養殖の価値の差は歴然としているのだが、肉の世界では天然モノが一般流通しないために差自体が存在しない。
シカ肉は天然素材であり牛や豚は所詮養殖である。牛や豚の旨さは脂であり、シカ肉の旨さは肉本来の味である。
脂を食べると太りやすいが、肉を食べても太らない。いわゆるヘルシーなのである。
と、強くシカ肉の優位性をうったえておく。


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