ヤマワサビというから本来は山の中にあるのだろうと思うが、いただくのはすべて庭先栽培である。
調べてみたところ、元来はヨーロッパ生まれで、明治の初めに伝来したが和食とあまり合わず、普及せずに捨てられたものが野性化し北海道のいたるところに山菜として存在することとなった。
実は北海道原産の山菜ではなかったのである。ホースラディッシュというりっぱな英名もある。
根を多少残して花壇の片隅に植えておくと2.3年でおいしいヤマワサビが収穫できるのはご存知のとおりで、非常に強い生命力で生き残ってきたのである。
葉はギシギシにも少し似ているが、根を掘り、匂いを嗅ぐとわさびの香ばしいにおいがする。
北海道内では何百ヘクタールも栽培され出荷されている。しょうゆ漬けの瓶詰も売っているのでかなりポピュラーなのだろう。さらに、抗菌、食欲増進、血液さらさら、抗がんなども作用もあり、健康食品としても注目されている。
熱々ご飯におろしたてのヤマワサビをのせ、きざみ海苔をまぶし生醤油をかけて食べる。
ツーンは鼻を抜け頭の先を通り越し、あまりの辛さに立ち上がり、涙とともに汗が噴出す。これがうまいのである。
とはいえ、健康に良いからといってご飯のたびに飛び上がっていては怪しげに思われるので適当にしておいたほうが良い。残りは乾燥と温度を控えて冷凍庫での保存がよくきく。
この日本人の鼻腔を魅了する辛さはアルカリカラシ油といい、すりおろすことによって辛さを発揮し、ツーンが発生するのだそうである。
ワサビの辛さは揮発性なので瞬間的であり、何回も楽しむことができる。あの辛さがカレーのように舌に刺さったまま持続してはたまらない。
ワサビの辛味は細胞が壊れることで生成され、きめ細かくするほど辛味が増すといわれている。したがって、力を入れないように細かくするのが正しい。
ワサビは「笑いながらすれ」とか「の」の字を描くようにおろせ」などと言われる。つまり、力むとキメが荒くなり粘り気も落ちるからである。
一方で、「わさびは怒りながらする」というのもあるのだが、これはわさびを辛くなくするお子様向けの方法だろうか。