子供の頃野山で遊んでいて土手を上ろうとして滑ってしまい、ぐっと近くのものを握ったところそれが不幸にもイラクサだったりする。しまったと思うが、しばらくの間は手がちかちかしてしまう。
苛草と書きその名の通り苛々するのである。
あのちかちかはトゲに含まれる蟻酸が原因であるらしいことは知っていたので、今はやりのインターネットを駆使し検索してみたが、あまり苛草のことを熱心に研究している方はいないらしく、せいぜいアリのケンカで相手にかける毒ぐらいしか詳しいことは調べられなかった。しかし、学名の「ウルチカ」という名は、棘されると痛いの意味であるとか、花言葉は「意地悪な君」であったりするのは昔からイラグサはちかちかしていたということがわかる。
調べていて気がついたのだが、不幸にもイラクサに触ってしまい苛々している場合は、その毒が蟻酸であるならばハチと同様の酸性毒なので、市販されているキンカンなどを使うと毒が中和されちかちかがなくなるのではないか、と。とはいえ、わざわざイラクサをぐっと握ってみる気もなく、どなたか勇気ある方の報告を待ちたい。ただし、実験してそのとおりではなくとも、ちかちかの責任はとらないのであしからず。
食べ方はいたって簡単で、棘の迫力も十分発揮していないまだ小さいほんの出たての頃のイラクサを根本から摘み、よく洗って鍋で煮る。その後アク抜きのため水に浸し、お浸しでいただくのである。味はそんなに灰汁も強くなく癖もなくであるが、サクサクとしたすこし歯ごたえのある食感が何ともいえない。今思えば上品で高級な感がある。食べていたのは子供の頃で、よく母がタンポポやアザミやイラクサを食卓に並べていた頃があり、きっと山菜の食べ方でも研究していた時期があったのでもないかと思う。
あまりうまそうだとは思えないが、はじめに食べた方に、なぜこのようなものを食べる気になったのか聞きたいものである。きっと食べる前に手で触ってみたのだろうなぁ。ちなみに、口の中で舌がちかちかすることはないのでご安心を。
↑左からエゾイラクサ、ホソバイラクサ、ムカゴイラクサ。