シ・ペツ=「大きな川」ですね。その支流は「ムサ・マタオチ・ケネカ」など大小さまざまで数え切れないほどあります。大きな川は、川の誕生から今、そして未来まで多くの恵みをもたらしていきます。
― 斜里のトウフツの女性が娘を三人産み、故あってシベツ川支流のツナナ(干し鮭を作る所)に住んでいました。一人の娘をチフル(舟の通り路)の村長(むらおさ)の妻にしました。姉娘はたった一人でサンホッキ(三本木)に住んでいました。
ある時、シベツ川上流のポンケネカ川(ござなどにする草)を採りにいった。そこで上流から流れてきた美味しそうな物を食べた。2、3日すると腹が大きくなり、8日目ほどで角の生えた男の子を出産した。この子も大人になり、娘二人と男が産まれた。
姉娘はチウルエ(忠類)村長の妻に懇望されたが、クナシリ(国後)セセキ(瀬石)の村長がアイヌの中では一番の宝を出して妻にし、シベツに住むようになった。
これ以来、クナシリとシベツは行き来するようになり、シベツ川での鮭漁や鷲猟を自由にさせるようになった。
この物語は「川」を一つの縁として人と人を結びつけた壮大な物語の一部です。
(「加賀家文書」から引用)
(中標津町文化財保護審議委員 戸田峯雄)